今日は恩田陸さんの「祝祭と予感」を紹介していきたいと思います。
本作はベストセラーである「蜜蜂と遠雷」のスピンオフとなっており、
コンクール後の話や舞台裏の話、過去の話など全6編で構成されています。
様々な登場人物をさらに掘り下げた物語になっているため、
本編を読んだ方には是非ともこれも読んでいただきたいですね!
あらすじ・感想
祝祭と掃苔(そうたい)
ピアノコンクールが終わった後、マサルと亜夜と塵が綿貫先生の墓参りへ行く話です。
この話では塵の家族について知ることができますが、
家族構成が驚きなんですよね。
まさに塵らしいと言えば塵らしいですが、笑
それに三人の他愛のない話も新鮮味があってよかったです。
本編ではライバル同士だったというのもありましたからね。
ひとつ気になることは、マサルと亜夜が今後どうなるかですよね。
ここに関しては最終的に明かされないため、想像で補完するしかないですねー。
獅子と芍薬(しゃくやく)
本編のピアノコンクール審査員だったナサニエル・シルヴァーバーグと嵯峨三枝子の出会いの話です。
二人は元夫婦の関係でしたが、
その最初の出会いは意外にもお互い印象最悪だったんですね…
それもそのはず、お互いホフマンの弟子になりたいという願望があったため、ライバル関係でもあったんです。
いがみ合う二人ですが、音楽を通して徐々に惹かれあっていきます。
本編ではナサニエルがやや傲慢な性格である印象を持ちそうですが、意外と神経質でナーバスな一面もあるということがわかります。
後の話もナサニエルが登場しますが、総じて「いい人」なんですよね。
本作を読んで一番印象が変わった人物だと思いました。
袈裟と鞦韆(しゅうせん)
菱沼忠明が二次予選の課題曲である「春と修羅」を作曲したきっかけとなった話です。
作中に小山内健次という菱沼の教え子が登場しますが、「春と修羅」というのは元々宮沢賢治の詩であり、それをもとに小山内を想いながら作った曲なんですね。
とても切なく、哀愁が漂う話となっていますが、個人的に一番好きな話です。
そうだよなあ、小山内。
自分のモノを作るってことじゃあ、俺もおまえもなんら変わらない。
どちらも音楽の前では対等だ。
誰しも、たったひとりで荒野を行く修羅なんだよなあ。
竪琴と葦笛(たてごととあしぶえ)
マサルがナサニエルの弟子になるきっかけとなった話です。
マサルは最初からナサニエルに師事してもらったわけではないようです。
「誰を師事とするか」によっても今後の音楽性や方向性も変わってきますからね。
マサルがナサニエルの下にくることもある意味運命だったのではないのでしょうか。
この話にもナサニエルの意外な一面が見えたりするので、読んでいるうちに好感度がどんどん上がっていきますね、笑
鈴蘭と階段
ヴィオラ奏者に転向した奏が楽器選びに悩んでいる話です。
自分の「相棒」とも「伴侶」とも言えるほどの楽器を見つけることはとても大変ですよね。
この話はコミカルな場面もあったりするので、読んでて楽しかったです、笑
あたし、豆もやしと豚バラ肉の山の前で、こんな大きな決断を迫られてるわけ?
伝説と予感
ホフマンと風間塵が初めて出会った時の話です。
塵は幼い時からホフマンが戦慄が走るほどの才能を持っていたんですね。
話自体は短いですが、
ここから「蜜蜂と遠雷」がはじまると考えると、とてもアツいです!
明るい場所で、素敵な体験をした。
深く、心が動いた何かを体験した。
それは、きっと、今目の前のこの光景のことだったのではないだろうか。
終わりに
「蜜蜂と遠雷」がより一層面白くなる
本作は主要な登場人物だけでなく、奏や菱沼といった人物にもスポットライトを当ててくれます。
なので、改めて本編を読んだらまた違った視点で見ることができて面白いかもしれませんね。
わたしもすっかりこの世界観にハマってしまったので、また今後読み返したいなと思いました。
是非「蜜蜂と遠雷」と一緒にこの「祝祭と予感」も併せて読んでみてください!