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【小説】恩田陸 蜜蜂と遠雷(上) 感想 4人の天才たちの演奏がすごい!

今日は恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷(上)」を紹介していきたいと思います。

直木賞、本屋大賞を受賞したということもあり、発売時から有名でしたよね。

わたしも楽しみにしていたので、少し遅いですがワクワクしながら読むことができました。

本作はピアノコンクールを舞台に四人の天才たちが優勝を目指すというものです。

ピアノに詳しくないわたしでも、その世界観に思わず引き込まれてしまいました。

あらすじ

近年その覇者が音楽界の寵児となる芳ヶ江国際ピアノコンクール。
自宅に楽器を持たない少年・風間塵16歳。
かつて天才少女としてデビューしながら突然の母の死以来、弾けなくなった栄伝亜夜20歳。
楽器店勤務のサラリーマン・高島明石28歳。
完璧な技術と音楽性の優勝候補マサル19歳。
天才たちによる、競争という名の自らとの闘い。その火蓋が切られた。

〜「BOOK」データベースより〜

見どころ・感想

しのぎを削る四人の天才

本作は4人の主役が登場しますが、それぞれ演奏の表現が全く違うんですよね。

4人の出で立ちや背景ももちろん違うので、その人の世界観によってピアノの音色が変わっていく様は、個性的で飽きさせないです。

風間塵

 

年齢は16才と、4人の主役の中で最年少と同時に、一番異質な存在とも言えます。

伝説的なピアニストであるユウジ・フォン=ホフマンの弟子でありながら、正規な音楽教育をまとも受けておらず、さらには自宅にピアノすらないという環境で育っているんです。

ただ、演奏技術は凄まじく、たちまち聴いた人たちを魅了してしまいます。

しかし、その演奏も賛否がハッキリと別れるほど異質なのだそうです。

なんて凄まじいー
なんて、おぞましい。

彼の演奏を聴くと、良かれ悪しかれ、感情的にならずにはいられない。
彼の音は、聴くものの意識下にある、普段は押し殺している感情の、どこか生々しい部分に触れてくるのだ。

素晴らしい演奏というものは、誰もが感動をして喝采を上げるものですが、
風間塵の演奏というのは、
その先にある、人の「核心」をついたような演奏なのでしょうね…

 

栄伝亜夜

 

かつて「天才少女」と言われていたピアニストでしたが、
13才の時、母の死をきっかけに直前のコンサートをドタキャン。

結果的に表舞台から姿を消すこととなりました。

しかしその後、名門私立音大の学長に目に留まり、久方振りにコンクールに参加することになります。

音楽自体を離れていた訳ではありませんでしたが、長い間本格的な練習を行っていなかったため、腕が鈍っていると思いきや…
やはり天才少女と言われてきてだけあり、その腕前は本物でした。

見よ。今、舞台の上にいるのは、音楽を生業とすることを生まれながらに定められた、プロフェッショナルなのだ。

自在にピアノを操る舞台の上の少女は、本当に「飛んで」いるようだった。
天翔ける女神。やっと、信じていた女神が舞台に戻ってきたのだ。

 

高島明石

 

年齢は28才とコンクールの中で最年長の参加者です。

家庭を持ちつつもわずかな時間を見つけて練習を行っており、他の3人と比較すると突出して実力があるというわけではありませんが、逆にそれが強みとなっています。

そう、大人の演奏をするのだ。
今自分が抱いている複雑な思いや孤独、音楽に対するアンビバレントな思いをも演奏で表現すればいい。
それが、最年長のコンテスタントの唯一のアドバンテージなのだ。

やはり、音楽というのは人間性なのだ。この音は、私の知っている明石の人柄がそのまんま表れている。明石という人の包容力の大きさが、音に、響きに宿っている。

しかし、仕事もしている関係で寝る間を惜しんで練習を行っているため、コンクールへの参加もやめてしまおうかと悩んだり、
年齢と実力からコンクールの参加を虚しく感じたりなどと、
その背景には苦労の連続でした。

その分、最初の演奏が終わった時はまさに感動ものでしたね…
思わず泣きそうになりました…

夢中で拍手をしながら、満智子は心の中で呟いた。
あたしは音楽家の妻だ。あたしの夫は、音楽家なんだ。

 

マサル・カルロス・レヴィ・アナトール

 

コンクール一番の優勝候補です。まさにスター。ジュリアード王子とも呼ばれています。

マサルの師匠であるナサニエルからも、かなりの期待を持たれています。

実際の演奏ももちろん文句なしであり、高島明石に至ってはその演奏を聴いた瞬間心が打ちのめされる程です。

確かに、凄い。
あたしが将来を予想するまでもなく、あの「王子」はホンモノだ。
ううん、既に彼はスターなんだわ。

順当にいったらマサルが優勝をしてしまうのではないのでしょうか。
本選はどうなるのやら…

また、栄伝亜夜とは昔に何か縁があったようですね。
そこも気になります。

終わりに

本作のコンクールは1〜3次予選があり、最後に本選となります。

上巻は1次予選から2次予選の途中までなので、今後どうなるのか楽しみですね。

上記の4人は本選に残るだろうし、誰が優勝するかですよね。

確かにマサルが優勝候補ですが、やはり風間塵が優勝するのかなあ…

もちろん亜夜と明石も引けを取らないのでどうなるかわからないですね…

引き続き下巻もワクワクしながら見ていきたいと思います!