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【小説】賽助 君と夏が、鉄塔の上 感想 鉄塔がこんなにも奥が深いとは!

今日は賽助さんの「君と夏が、鉄塔の上」を紹介していきたいと思います。

本作は「鉄塔」にまつわる物語となっていますが、鉄塔がテーマなのはなかなか珍しいですよね。

加えて夏らしい青春場面やちょっとしたホラー要素もありますので、読んでて不思議な体験をしたような気分になれました。

あらすじ

鉄塔オタクの僕は、中学三年生の夏休みをダラダラ過ごしていた。
でも登校日に同級生の破天荒な女子、帆月蒼唯から「公園の横にある鉄塔って何か特別だったりする?」と尋ねられる。
翌日気になった僕が公園に向かうと、幽霊が見える少年、比奈山優がいた。そこに帆月も現れる。
三人で何のヘンテツもないその鉄塔、京北線94号鉄塔を見上げてみると―。
爽やかに描かれる、ひと夏の青春鉄塔小説!!
〜「BOOK」データベースより〜

見どころ・感想

テーマが「鉄塔」というのは斬新!

本作は「鉄塔」の存在がとてもキーになってくるのですが、
主人公である伊達成実は鉄塔オタクであり、相当鉄塔に詳しいんですよ。

中学生でこんなに鉄塔の知識を持っているのは相当マニアックですよね。
作中でも鉄塔の種類やどこに何が建っているかなど、その知識を見せてくれます。

鉄塔ってこんなにも奥が深いなんだと読んでて感心させられました!

鉄塔は、見れば見るほど不可思議な形をしていて、どれもこれも想像以上に背が高い。
そしてそこには、高圧電流が絶えず流れ続けていて、静かに唸り声を上げている。
だから、僕はそんな鉄塔の側に寄ると、感動と同時に畏怖の念を覚えてしまうのだ。

帆月の見えているものの真相は果たして…

物語のきっかけは、「鉄塔の上にいる帆月にしか見えない男の子の正体を探る」ことから始まりますが、帆月にしか見えない理由やその男の子の正体は最後まで明かされないんですよね。

わかっていることは以下の通りです。

  • 帆月に触れていると男の子が見えるようになる
  • 男の子は公園の近くの社と関係がある
  • しかし全て帆月の妄想かもしれない

読んでる限り妄想で説明できるところと説明できないところがありますからね。

でもそういう不思議なところが逆に夏らしくていいのかなと思いました。

後半は一転して青春してる!

後半は急展開でスピード感がありましたが、青春らしくてよかったです!

後半までは結構淡々とストーリーが進んでいたので、こんな伊達君のアツい見せ場があるとは思いませんでした。

冒頭の自転車がまさかここにつながってくるとはねー!

社の男の子も予想とは違って、可愛らしい描写が多かったのでホッコリしました、笑

忘れたくない、忘れられない想い

「私ね、忘れられたくないと思ってた。
でもみんな、私のことを忘れちゃう。
私はそれが……嫌だったの」

この帆月のセリフから、彼女が今まで何故変なことばかりしていたのかが分かります。

普段は明るい彼女が実はこんなに繊細だったなんて、そのギャップがね…

ただ、確かに気持ちは分かります。
どんなに忘れたくないことでも、嫌なことでも嬉しいことでも時間がたてば忘れてしまうものです。

でもそのことに執着してしまったら、思い出の奴隷になっちゃいますよね。

あと、この彼女の気持ちに対する伊達君の返しが好きでしたね。
鉄塔好きらしい良いセリフでした!

お面の人や明比古の正体は結局?

疑問なのは、お面の人たちと明比古が結局何者だったのかですね。

特に明比古は唐突に登場したり、鉄塔に興味を持ったりしていたので、「実は正体はお面の人なのでは?」って考えてました。

しかし、最終的には分からずじまいだったので気になりますねー。

終わりに

色々と謎を残して物語は終わってしまいますが、それもまた本作の魅力だと思いました。

伊達君と帆月の今後の関係も気になるところですね。

私も鉄塔に興味が湧いてきたので、今度見つけた時どんな形なのか確認してみようかなと思います!